台湾お茶事情

ルピシアだより 2021.7 表紙

今月は、皆さんお待ちかねの台湾春摘み烏龍茶が到着します。ルピシアでは年々ファンが増えている台湾茶。本場・台湾ではどんな風に親しまれているのでしょう。現地のお茶事情を取材しました。

お茶=お年寄りのもの!?

 世界有数のお茶処、台湾。さぞかし台湾茶が身近に楽しまれているのだろうと台湾在住のルピシアスタッフに聞いてみると、驚きの答えが返ってきました。

 「残念ながら、私のまわりでは日常的にお茶をいれている人を見たことがありません。お茶は台湾の名産品なのでギフトにはよく使いますが、自分で飲むという話はほとんど聞かないですよ」

 ええっ本当に!? なんでも台湾では、「お茶はおじいさんの飲み物」というイメージなのだとか。ころんと丸まった茶葉にお湯を何度も注ぎ足しながら、ゆっくり味わう昔ながらの光景も今は昔。自分で茶葉からお茶をいれる人は、かなり減っているようです。

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「昔のもの」になりつつある
伝統的なお茶飲み談義の光景。

スタンドは大盛況

 替わって、今の台湾における最も身近なお茶との接点は、タピオカミルクティーで日本でも話題となったティースタンド。お茶を使った甘いドリンクをテイクアウトできるティースタンドは、80年代に誕生して以降、猛烈な勢いで拡大を続け、台湾の日常に浸透しています。

 さらに取材を進めると、現地の茶業関係者から気になる話を聞きました。ティースタンドブームで茶葉の生産量が追い付かず、産地によっては年中茶摘みが行われている状況に。その結果、茶樹を休ませる暇がなくなり、元気な茶樹が育ちにくくなっているというのです。

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最も身近なお茶との接点はティースタンド。毎日のように通う人が多い。

台湾茶の未来は?

 新たなお茶の形として台湾の日常に溶け込むティースタンド。その一方で、歴史ある台湾茶はこの先どうなっていくのだろう……。

 取材班は、次世代の茶商(お茶のバイヤー)たちに話を聞いてみることにしました。みんな代々続く茶商の家に育ち、家業を継ごうと決めた20~30代の若者たちです。

 「今のティースタンドブームは、台湾茶の未来にとってピンチ? それともチャンスだと思いますか?」。こちらの質問に対し、彼らから返ってきたのは「チャンス」という頼もしい答えでした。

 理由の一つは、ティースタンドによる需要の拡大が、必ずしも台湾茶全体の品質低下に直結するわけではないこと。「茶農家や茶商のポリシーは、品質重視か利益重視かで二極化しています。自分たちが品質にこだわり続ける限り、何も問題はない」と胸を張ります。

 二つ目の理由は、ティースタンド同士の戦いが、品質競争の段階に入っていること。今や価格や話題性だけでなく、使用している茶葉のグレードや産地を売りにする店をはじめ、旬のフルーツとお茶の相性にこだわった店など、多種多様なスタンドが品質でしのぎを削っています。

高まる茶葉への関心

 「私たち30代は子供のころからティースタンドに馴染んできた世代です。年齢を重ねてお金に余裕が出てきたり、健康も気になり始めた今、ドリンクに使われている茶葉自体に消費者の関心が向き始めています」

 こう話すのは、家業である茶商の傍ら、自らティースタンドを立ち上げ、スタンド内で茶葉の販売も行っている高聖婷(ガオシェンティン)さん。彼女が茶葉の品質にこだわったスタンドをオープンしたのは8年前のこと。以来、ドリンクをきっかけに、台湾茶自体に興味を持ってもらえるような接客を心がけてきたのだそう。その思いが少しずつ浸透し、3~4年前から自宅やオフィス用に茶葉を買って帰る人が増え始めたといいます。

 「若い世代では、そもそも台湾茶のいれ方をご存じない方が多いんです。だから面倒だとか難しそうだと思われないよう、とにかく簡単にいれられることをお伝えしています」

 その言葉通り、高さんがすすめる台湾茶の楽しみ方はとってもシンプル。

 「マグカップに、底面がだいたい隠れるくらいの量の茶葉を入れて、熱湯を注ぐだけ。台湾茶の茶葉はとても大きいので、カップに茶葉が入ったままでも口に入ることなく飲めますし、渋くなりすぎる心配もありません。お茶の量が半分ほどになったら、お湯を注ぎ足すサイン。味がなくなるまで飲めますよ」

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自ら経営するティースタンド内で、品質にこだわった茶葉の販売も行っている高さん。ドリンクをきっかけに、茶葉本来の魅力を伝えようと奮闘している。

香り立ちに感動

 高さんによると、初めて茶葉からいれたプレーンな台湾茶を飲んだ人が決まって驚くことが二つあるといいます。一つは簡単さ。そしてもう一つは、茶葉自体の香りの豊かさなのだそう。

 「台湾茶ってこんなに華やかな香りで、柔らかな口当たりだったんだと皆さん感動されます。私たちが台湾茶の価値を分かりやすく伝えていくことで、伝統ある高品質な台湾茶を守っていけると信じています」

 台湾茶の未来を担う高さんたちの力強い言葉を聞いているうちに、思わず目頭が熱くなってしまった取材班。本当においしい台湾茶をお届けし、その魅力を一人でも多くのお客様と分かち合いたいという思いは私たちルピシアも同じです。

 旬の台湾烏龍茶では、今年も何度もテイスティングを重ねて選び抜いた旬の台湾茶をご紹介。まだ召し上がったことがない方も、ぜひ気軽に試してみませんか?

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【1・2・3】台湾都市部には、自分で台湾茶をいれられるカフェも。おしゃれなイメージで、若者がお茶に興味を持つきっかけになっている。
【4】カフェで販売している茶器もモダンな雰囲気。

台湾茶

台湾烏龍茶 極上の「緑の烏龍茶」

現代の台湾茶の主流は「緑の烏龍茶」、「清香(チンシャン)」などと呼ばれる爽やかな風味と香気、エメラルドや翡翠(ひすい)を思わせる青々とした茶葉の仕上げが特徴です。

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