お茶好きの茶話会:日本茶篇

「日本茶」とは、日本で作られているお茶全般のこと。日本茶の多くを占めているのが「緑茶」で、国内で作られている緑茶は、一般的に茶葉を蒸したり炒ったりして加熱することで、発酵を止めたお茶(不発酵茶)を指しています。抹茶やかぶせ茶、黄金色の水色(注いだ時の色み)の釜炒り茶なども、緑茶に含まれます。

01.品種によって、特徴もいろいろ。

お米に「コシヒカリ」などの品種があるように、お茶にもさまざまな品種があります。それぞれ味わいや香りの特徴があり、最近では品種でお茶を選ぶ人も増えています。現在、全国で栽培されている日本茶の約6割※は「やぶきた」で、味・香りともにバランスの取れた風味があります。2番目に多い「ゆたかみどり」は、鹿児島が主産地。濃厚な旨みと甘みが特徴です。
知覧 ゆたかみどり – 50g 袋入

※ 令和4 年度農林水産省調べ

「静岡の生産者・高橋達次さんが独自に育成した『香寿(こうじゅ)』は、もぎたてのブドウのような香りがします」(Aさん)

02.日本茶には、旬の味があります。

茶摘みの時期は、一年に何度も訪れます。新茶とは、その年の最初の新芽を摘み取ったお茶のことで、一番茶とも呼ばれます。新茶のシーズンは産地によって異なりますが、例年3月〜6月頃。春の訪れを告げる日本新茶は、フレッシュな香りとみずみずしい甘みがあり、人気があります。

「初摘みの若々しい新茶と、それ以外のお茶の熟成した旨みを、飲み比べるのも楽しいです」(Bさん)

03.産地を知ると、味わい方も変わります。

日本茶選びの基準の一つとなるのが産地。お茶どころといえば、真っ先に思い浮かぶのが東の静岡と西の京都です。

一般的に、加熱による自然な甘みが風味に変わる「深蒸し煎茶」が主流の静岡のお茶はしっかりとした味わい。抹茶や玉露を作る茶園が多い京都の宇治では、伝統的な「浅蒸し煎茶」がほとんど。旨みや甘さを重視したお茶作りが行われています。一方で静岡茶と宇治茶のハイブリッドといえるのが、九州最大のお茶どころ・鹿児島です。収穫前に一定期間茶樹を覆い、日光を遮って育てた茶葉を原料にしたかぶせ茶が一般的で、さらに、深蒸しにしてまろやかな味に仕上げています。

「濃厚な味と甘みの鹿児島『知覧 ゆたかみどり』は、ルピシアの日本茶の中でも特に人気のある深蒸し煎茶です」(Cさん)

04.製茶方法の違いで、こんなに個性的になります。

日本茶のバラエティーの豊かさは、製法一つとっても見て取れます。たとえば長時間加熱して、香ばしさを引き出した「ほうじ茶」。ほうじ茶の一種の「加賀棒茶」は、北陸・加賀特有のお茶で、お茶の茎の部分を主に焙じたもの。抹茶の原料となる「てん茶」は、茶葉を揉む作業がなく、煎茶とは製法が異なります。また、生葉を高温の釜で炒る「釜炒り茶」は、九州のごく一部でしか作られていない伝統製法。独特の香ばしさが特徴です。

「九州出身の私は、釜炒り茶が推し。香りが格別で、いつ飲んでもホッとします」(Bさん)

05.旨み、キレ、お湯の温度で自分流を極める。

煎茶の味は、大きく分けて甘み・旨み( テアニン)、渋み(カテキン)、苦み(カフェイン)で構成されています。そのバランスは、同じ茶葉でもお湯の温度によって変化します。低温でいれると、茶葉の甘みや旨みが引き出され、高温でいれると、爽やかな香りやキレのある味わいが楽しめます。

おいしいと感じる味わいのバランスは、人それぞれ。基本にとらわれず、自分好みのいれ方、味わい方で自由に楽しむのが一番です。

「個人的な感想ですが、関西圏は旨み好きが多く、関東圏はお茶の旨みが苦手な人が多い印象があります。だしの違いが影響しているのかもしれません」(Cさん)

06.日本茶とお菓子のペアリングとは?

和菓子、洋菓子などのジャンルを問わず、日本茶とお菓子のボディー感を合わせると相性が良くなります。日本茶のボディー感とは、浅蒸し・深蒸しといった製法の違いなどからくる旨み・渋み・苦みのバランスで、お菓子は、甘みの強さやボリューム感などに目を向けると組み合わせがしやすくなります。

「個人的に、浅蒸し煎茶は上生菓子やドライフルーツ。深蒸し煎茶には、どら焼きやカステラが合うと感じています」(Dさん)

07.飲むとホッとする、日本茶のリラックス効果。

お茶の旨み成分として知られるのが、「テアニン」という成分。アミノ酸の一種で、茶葉に多く含まれています。お茶を飲むと〝ほっこりする〞といいますが、この〝ほっこり〞という感覚には科学的な根拠があり、テアニンが関わっていることがわかっています。

テアニンを多く浸出するには、温度がポイントで、低温でいれると一層旨みを感じることができます。

「一段とリラックスしたい時には、渋みを抑えテアニンを引き出す、水出しがおすすめです」(Dさん)
らくらく簡単 水出しアイスティーの作り方

08.シーンで選ぶ、毎日のお茶。

朝の目覚めや仕事中には、頭の働きを活発にする煎茶を熱めのお湯で。リラックスタイムには、香ばしいほうじ茶や低温でいれた煎茶など、シーンや気分に合わせてお茶を選ぶと、生活のクオリティーが上がります。ちなみに、間食を防ぎたいなら、甘い香りのフレーバードティーが役立ちそう。

「私の場合、朝はすっきりとした味が飲みたいので、浅蒸し煎茶にミントの葉を入れて飲んでいます」(Bさん)

09.実は優秀!ほうじ茶が万能だといえる理由。

煎茶を直火釜などで焙じて製造したものがほうじ茶です。多くの産地・銘柄がそろう煎茶の影に隠れがちですが、実は、日本茶の中でもオールマイティーなお茶として一目置かれる存在です。
その主な理由は(1)湯冷ましが不要。熱湯ですぐいれられるので、お手軽。(2)渋み、苦みはほとんどなく口当たりが良いので、どんな料理にも合わせやすいなど、いいことずくめのお茶なのです。

「昭和30年以前は、お茶といえば〝ほうじ茶〞が日常のお茶でした」(Aさん)

10.おいしい日本茶に出会うと、ついつい贈りたくなります。

ささやかな感謝の印から特別なギフトまで、〝贈りやすく〞〝受け取りやすい〞のが日本茶の良いところ。日持ちがするだけでなく、日本文化のシンボル的存在でもあり、さらには「健康でいてほしい」という思いまでプレゼントすることができます。

「日本茶が苦手という人が少ないのも、人気の理由かもしれません。選ぶ際には、産地にこだわるのもおすすめで、たとえば九州の方には、普段飲んでいないような九州以外の産地のお茶を贈るようにしています」(Cさん)

フランスからリポート

ルピシア パリ店 店長
ジャン・プレさん

2013年のフランス・パリ店オープン時から、総支配人・店長を務めるジャンさん。日本語が堪能で、日本流のおもてなしはパリでも評判です。

世界的な日本食ブームや健康志向の高まりにより、日本茶の輸出量はこの10年で約2倍に増えています(※)。自然で健康的な飲みものを求めるニーズが高い、フランス人もまたしかり。パリ6区、サン・ジェルマン・デ・プレ教会そばにあるルピシア パリ店。店内には日本茶をはじめ、100種類以上のお茶を取りそろえており、2013年のオープン以来、パリジャン、パリジェンヌたちの心をつかんでいます。

※ 財務省貿易統計調べ。

「当店の売り上げの多くは日本茶(緑茶)です。フランスでは、日本茶は健康に良いというイメージを持っている人が多く、自分用に購入する人がほとんどです」

このように説明するのは、パリ店の総支配人、ジャン・プレさん。ギフトには、煎茶ベースのフレーバードティーが好まれるそうで、「煎茶よりも飲みやすいことが、大きな理由です」とのこと。

売れ筋は「MATCHA-GENMAICHA〝KAÏMON〞(抹茶玄米茶「開聞」)」や、渋みが少なく、口当たりが良い「SENCHA〝TAKACHIHO〞(煎茶「高千穂」)」など。ジャンさんによると、一般的にフランス人の多くは日本茶を〝紅茶より低カフェインで、安全な飲みもの〞と評価しているそう。「だからこそ、毎日飲む人が増えていると感じます」

パリ店のお客様にききました!

いつ日本茶を飲みますか?

  • 朝は一杯の日本茶から始まります。
  • 仕事中に、集中したい時に飲みます。
  • 妻が飲む時に一緒に飲むことが多いです。
  • 食事の時に飲んでいます。
  • 冬の日曜日の朝と昼に飲むのが好きです。
  • 気が向いた時に、たくさん飲みます。
  • 時間があればいつでも飲んでいます。

日本茶を選ぶ理由は?

  • とてもおいしいし、味もバラエティーに富んでいるので。
  • 日本好きな人へのプレゼントに使っています。
  • 上品でエレガントなところが気に入っています。
  • エキゾチックだから。
  • 味と品質の良さ、そして私の日本への愛から。
  • 日本を旅した時のことを思い出すから。

≫ 日本茶のおいしい いれ方はこちら

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