【旅する世界のティータイム vol.5】 絆深まるティータイム、スウェーデンのフィーカ(Fika)とは?

「ブック オブ ティー・ボン ヴォワヤージュ」のティーバッグに描かれた世界各地の風景や文化。それぞれの国に、その国ならではのお茶の時間があるのをご存じですか?

エルダーフラワー&カモミール

今回の舞台は、北欧スウェーデン。ストックホルム在住のライターが、スウェーデンのお茶文化「フィーカ(Fika)」の魅力をご紹介します。

【レポートしてくれた方】

Mari Liljefors(まり・リリョフォス)
1991年にスウェーデンに移住。ライフサイエンスに30年近く携わり、今は医大の教育関係に従事している。

スウェーデンのお茶文化「フィーカ(Fika)」とは?

みなさん、「フィーカ」という言葉をお聞きになったことはありますか? 

ここスウェーデンには、一日に数回、仲間と一緒にお茶やコーヒーを飲む、フィーカという習慣があります。一般的には、同僚や上司と一緒に雑談交じりにコミュニケーションをとる職場でのお茶時間のことを指しますが、家族とのお茶の時間や、ひとりでリラックスしたお茶の時間を過ごすこともフィーカと呼ばれます。

フィーカという言葉は、昔は「急いで」とか「好奇心が強い」といったことを意味する言葉でした。それが現在のような意味になったのは、約100年前にストックホルムのロングホルメンという刑務所で「お茶しよーぜ」とスラングのように使われ始めたのがきっかけなのだそうです。

私の職場でも、フィーカは日常です。フィーカの時間は、午前と午後の1日2回。フィーカの時間になると、よく職場の誰かが「フィーカの時間だよ!」と声をかけてくれ、みんな一斉に仕事の手を止め、食堂などに集まります。そこで15分から30分くらい雑談しながら、お茶菓子と一緒にコーヒーやお茶を飲むのです。単にお茶をするのではなく、そこには必ず人とのコミュニケーションがあります。

職場のフィーカでは、個々に小さな丸い茶漉しに茶葉を入れ、自分の飲みたいお茶を楽しむのが一般的。

職場にフィーカが欠かせない理由

スウェーデンには、日本のような仕事帰りの「飲みニケーション」はほとんどありません。仕事が終わるとみなさんすぐに家に帰るので、職場のフィーカに参加することは潤滑に仕事を運ぶ上でも、とても重要なコミュニケーションの時間です。

そもそもなぜ、スウェーデンでは仕事帰りのお付き合いが少ないのでしょう? 理由は大きく2つあります。1つは、スウェーデンの人たちが家庭を大事にしており、仕事帰りは子供の学校や習い事のお迎えや家事に忙しくしていること。もう1つの理由は、スウェーデンの物価の高さにあります。私がストックホルムに住み始めた1991年から消費税が25%になったのですが、アルコール税が特に高く、夕方外でアルコールを伴う食事をした場合は、軽く飲んだつもりでも1万円近くかかってしまいます。

こうした理由から、仕事後に外で「ちょっと飲みに行こう」は滅多に無いので、フィーカが職場の人とのコミュニケーションの大事な場となっているのです。

フィーカを彩るお茶とお菓子

フィーカの時間によく飲まれているのは、コーヒーや紅茶、ハーブティーなどさまざま。スウェーデンの人たちは日本がとても好きなようで、緑茶もよく飲まれています。ストックホルムだけでも300軒以上「すし」と名のついた小さなレストランがあるのも、日本好きの表れと言えるでしょう。ここでも決まって緑茶が出てきます。

ストックホルム・セーデルマルム島に古くからある、有名な紅茶専門店。華やかな香りのブレンドティーが人気。

フィーカには、お茶菓子も欠かせません。パン菓子が多いのですが、中でも定番は「レングド」と呼ばれるシナモンロールやカルダモンロールを長くしたような形のパン菓子です。職場にフィーカのお菓子を差し入れる場合は、たいていこのレングドを人数分に切り分けて、テーブルの中央に置いておきます。ただ、ここ最近はコロナの影響で、職場の食堂に集まれるのは6人までと、国からの制限がかかっています。在宅勤務も多く、残念ながら職場のフィーカはしばらくおあずけです。

「コンディトリー(konditori)」といわれる、パンやケーキを販売しているカフェのショーケース。フィーカのお茶菓子がずらりと並んでいます。

定番のお茶菓子「レングド」。

またみんなとワイワイ職場でフィーカしたいな……と思いながら、最近は在宅勤務の合間に、ひとりフィーカを楽しんでいます。スウェーデンでは、夕食やお茶の時間にロマンチックにロウソクに火を灯す習慣があるのですが、フィーカの時も同じように雰囲気が大切です。今日は、昨晩焼いたシナモンレングドを切り分けて、ジャスミンティーで仕事の合間におひとり様フィーカ。ほっとした時間を過ごして、しばしリラックスできました。

ジャスミンティーでひとりフィーカ。スウェーデンではキャンドルは日常品。ティーキャンドルと呼ばれている小さいキャンドルは、どの家にも、職場の食堂にも常備されています。

雪の中でも楽しくSunday Fika!

フィーカは、もちろん私生活でも頻繁に行います。職場でのフィーカに次いで、スウェーデンの人たちがよく行っているのはSöndagsfika(=Sunday Fika)。週末には、お友達や家族とコーヒーやお茶を水筒で持って行って公園でフィーカしたり、夏休みには、サマーハウスに親戚一同が集まってフィーカしたり。冬は雪が降り積もり、氷点下8度くらいの気温が続きますが、凍えそうな寒さの日でも、お日さまさえ出ていれば外を散歩して、小さなレストランや湖のほとりで持参したコーヒーやお茶を楽しみます。

寒さをものともせず、外でSunday Fikaを楽しむ人々。

氷点下の気温が続き、あたり一面雪景色となるスウェーデンの冬。

スウェーデン人にとって、フィーカは生活に根付くとても大事な絆の時間。普段そんなにお話ししない同僚や上司とも、お茶やコーヒーを囲んで向き合えば、仕事やプライベートの話を気軽に話せる間柄に早変わりします。いつも忙しく、なかなかゆっくり話ができない家族でも、フィーカならみんな喜んで集まります。

みなさんも一日のどこかで、忙しい手をちょっと休めて、ご家族やお友達とフィーカを楽しんでみませんか?


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