アイスティーの起源を追って

アイスティーの歴史を遡(さかのぼ)ると、アメリカ南部の冷たく甘いお茶の文化にたどり着きました。

南部の「甘い」寛(くつろ)ぎ

古き良きアメリカの文化を色濃く残す南部。レストランでアイスティーをオーダーすると、初めて飲む人はその味に驚くかもしれません。あらかじめ砂糖がたっぷり入った甘い紅茶が出てくるからです。南部では、アイスティー=スウィートティーのこと。濃くいれた紅茶にグラニュー糖を加えた原液を水で薄め、氷を入れたグラスに注いで作るスウィートティーは、アイスティーの起源と深く関わっています。

現在でも、アメリカ南部では、レストランはもちろん各家庭の冷蔵庫にも、ホームメイドのスウィートティーが季節を問わず常備されています。また、南部を中心にアメリカの多くの学校や軍隊の食堂などでも親しまれています。日本でいうところの番茶や麦茶のようなイメージでしょうか。

アイスティーの誕生

1905年に発行されたレシピ本に掲載されたティーフロートの写真

逆に冷めてしまったお茶ではなく、氷などを入れて味わうアイスティーについて歴史を遡さかのぼると、1840年代のイギリスの文献に掲載されている、ロシアの天然氷を使った冷たいお茶の記事にたどり着きます。

それでは、天然氷ではない、人工的に冷たくしたアイスティーの始まりはというと、アメリカの冷蔵庫や製氷機など冷蔵技術の発達が大いに関わっています。アメリカでは、南北戦争(1861~1865)により北部から氷が届かなくなったため、南部では早くから家庭などで冷蔵庫が普及しました。贅沢なおもてなし品として当時好まれた、お茶にシャンパンなどのアルコールやジュースなどを加えた甘く冷たい「ティーパンチ」が飲まれるようになったのです。

1879年に出版された「Housekeeping in Old Virginia」の表紙と、本の中で使われた挿し絵。
※表紙は後に再版された時の物です

一般的には、1904年にアメリカ・ミズーリ州のセントルイスで開かれた万国博覧会でイギリス人の紅茶商が提供したのがアイスティーの始まりだといわれます。しかし、それに先駆けて1879年に出版されたレシピ本「Housekeeping in Old Virginia」にアイスティーの作り方が紹介されています。その手順はというと、まず温めたティーポットに熱湯と茶葉を入れます。

「夕食時に飲みたければ、朝食の時に作りなさい」との表記があり、驚くべきは夕食時まで茶葉を浸しっぱなしにするということ。氷の入ったグラスにグラニュー糖を入れ、その上からとても濃いお茶の抽出液を注ぎます。「レモン汁を入れると、より美味しく健康になりますよ」と締めくくられています。

上の写真は、1905年に発行されたレシピ本に掲載されたもので、アイスティーにアイスクリームを浮かべたティーフロートが並んでいます。100年以上前に、このようなアイスティーが楽しまれていたとは驚きです。

甘さの秘密

さて、ここからはアメリカ南部のアイスティーこと、スウィートティーの甘さの秘密を探ってみましょう。

甘い甘いアイスティーが誕生した大きな理由として、かつては高価な嗜好品であるお茶や砂糖をたっぷり使うことがステータスと考えられていたことが挙げられます。南部はアメリカがヨーロッパの人々によって最初に植民地開拓された地域の一つ。「貴重なお茶に貴重な砂糖を入れて飲む」という上流階級のステータスシンボルが一般の人々にも普及し、今日に至ったと考えられます。

また、サウザン・ホスピタリティと呼ばれる、おもてなし好きの南部の気質もスウィートティーを広めた一因でしょう。さらに現在、コーラやソフトドリンクの世界的な飲料メーカーがアメリカ南部から誕生したことも忘れてはいけません。

甘いアイスティーも、その歴史や起源に思いを巡らせながら楽しめば、単なる甘いお茶ではなく、より一層味わい深いものとなるのです。