THE ASSAM TEA いちばん濃くておいしい アッサム

アッサム紅茶とは

甘い大地の香りと濃厚な風味で知られるインドを代表する紅茶産地アッサム。豊かな大地を思わせる自然な甘みと力強いコクを楽しめる、ミルクティー向きの紅茶を多く産する地域です。茶葉をつぶし裂き丸めるCTC製法(Crush, Tear and Curlの略)の発祥地で、インド最大の生産量を誇ります。旬は夏。黄金に輝く新芽と、甘くふくよかな味わいが特徴です。

生命を育む密林の土地

英国統治下のインド・ムンバイで生まれたノーベル賞作家ラドヤード・ キップリング(1865~1936)。彼の代表作『ジャングル・ブック』(1894)中の短編「象使いトゥーマイ」には、19世紀後半のアッサム・ガロ丘陵にて野生の象を狩る人々の生活が生き生きと描写されています。古強者(ふるつわもの)の老象の背に乗った子供が、象たちによる深夜の森の「舞踏の儀式」に参加することで、偉大な象使いとして認められる神秘的な通過儀礼の物語です。

アッサムは、当時も今も多くの茶園と水田、果樹園、そして象の心象を代弁する作家によって「いまだ夜の明けぬうち、曙光(しょこう)射す前に出ていこう─── 風の汚れなき口づけに、水の清らかな抱擁にこの身をまかせよう」と讃えられる、野生の象や犀(サイ)が生息する密林や湿地、草原が点在する豊かな土地。

北海道本島とほぼおなじ面積、約7万8千平方㎞の東西に広がる盆地の中央を、大河ガンジスの源流となるブラマプトラ川が流れ、熱帯気候の太陽のエネルギーが、無数の植物と動物を育む力になっています。

上)19世紀後半に出版されたアッサムの地理書より。
右)19世紀にアッサムに暮らす先住民を描いたスケッチより。
製造の過程で茶葉のエキスにより黄金色に染まった新芽(ゴールデンチップス)を含む、伝統的なオーソドックスタイプのアッサム紅茶。

英国式紅茶 王道の誕生

19世紀初頭、紅茶産業は発祥の地である中国がほぼ独占しており、当時世界最大規模の紅茶消費国であった英国は、総力をあげて自前での生産を目指していました。そのため1823年に英国出身のブルース兄弟が、統治国であるインド・アッサムで野生茶樹を発見したことは大きな意味を持っていました。間もなくアッサムで英国人による紅茶産地としての開拓が始まり、1836年に最初の試作品がロンドンに送られます。数年後に紅茶市場での取引が開始され、1850~1860年代にはアッサムの紅茶産業は事業者と投資者に「緑の黄金」として莫大な利益を産みだすようになります。

実はブルース兄弟の発見以前にも、お茶の木に関する報告はあったのですが、中国の茶樹と比較して、茶葉も樹勢も大きなアッサム産茶樹が、同じ植物と認定されるのには時間がかかりました。

開墾(かいこん)当初のアッサムでは、土地に自生する苗と中国から運んだ茶樹、それらを交配させた雑種が栽培されていました。やがて試行錯誤の上、アッサムに自生していた茶樹から優良な株が選抜され、アッサム品種が確立します。

アッサムの密林での生活を描いた「象使いトゥーマイ」英国版原書イラストより。
本文はキップリング著、山田蘭訳『ジャングル・ブック』(2016)角川書店より引用。

アッサム以前に流通していた繊細な味わいの中国紅茶と比較して、英国が開発した新しい紅茶は、力強いコクのある甘い香りと、ミルクを入れても満足できるどっしりとした濃厚な風味があり、特にお茶の風味の出にくい硬水を飲用水にするヨーロッパで人気を集めました。

また生産に手間のかかる製茶作業を、蒸気機関など機械化による合理化や新製法の確立によりコストダウンすることで、それまで高価なぜいたく品であった紅茶が、一般庶民でも飲める日常品に変化しました。

現在のニルギリやダージリンなどインド各地やセイロン(スリランカ)、アジア・アフリカ諸国、そして日本や中国などの紅茶産地で利用されている製法や製茶機械の多くは、19~20世紀にかけてこの土地で確立した方法が起源。アッサムは一流産地であるだけでなく、世界の「紅茶の故郷」なのです。

アッサムの旬と種類

世界最大級の紅茶産地アッサムの収穫・生産期は3~11月。特に6~7月の夏摘み=セカンドフラッシュは、麦芽にも似た自然な甘みやコクがある濃厚な味わい、芳醇な香り、濃い赤褐色に輝く水色(すいしょく)といった、特徴が色濃くあらわれる旬(クオリティー)となります。

アッサムで生産される紅茶は大きく2種類。現在では生産の90%以上を占めるCTC製法による紅茶は、細かい茶葉によりエキスが抽出されやすいため、ミルクティーに向いた濃厚な味わいをお手軽に楽しめる日常の紅茶におすすめ。

19世紀から作られている伝統的なオーソドックスタイプは、主に海外への輸出品として生産される高級品として知られ、特に夏摘みの上級品に、茶葉のエキスで黄金色に染まった新芽=ゴールデンチップスを含んだタイプは、世界中のお茶好きの間で愛好されています。

ミルクティーが絶品

アッサム紅茶の甘く濃厚な風味は、ミルクと相性抜群。ミルクをたっぷり入れたい方は、細かい茶葉から甘みやコクがしっかり出るCTCの茶葉がおすすめ。少量のミルクでライトに楽しみたい方は、ゴールデンチップス(茶葉のエキスで黄金色に染まった新芽)を含んだ大ぶりの茶葉を選ぶと、香りや優しい甘みが引き立ちます。ミルクの量や作り方にもこだわって、極上ミルクティーを召し上がれ!

» ミルクティーのおいしい作り方はこちら

※CTCとは、茶葉を細かく砕き、裂いて丸めた紅茶のこと。
Crush,Tear and Curlの略。